世界遺産2 三重の滝

【前鬼の裏行場】 世界遺産「三重の滝」コース(健脚向き)

前鬼からは世界遺産のエリア。
「小仲坊」の横にある「行者堂」での礼拝や
そこを起点とした山登りを指すいわゆる「表」の行場に対し、
「裏行場」前鬼川上流の渓谷に向かうコース。

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(前鬼川上流の清流)

「前鬼」一帯は山林経営のために天然林が伐採され
役行者の時代の輝きは見る影もない杉林となっていますが、
そこを離れて自然林の中に分け入ってゆくと、
息をのむ美しさに包まれます。
行者が籠った洞窟がある
落差50mの名瀑「千手(せんじゅ)の滝」まで、
片道およそ1時間半の道のりです。

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(ブナ林の中にたたずむ「閼伽坂地蔵」)

まず前鬼の小屋の向かって右手から、
「閼伽坂峠(あかさかとうげ)」を目指して
ゆるやかな坂道を登ります。
「閼伽(あか)」というのはサンスクリット語「アルギャ」の音訳で、
仏様や神様にお供えする水のこと。
「閼伽水(あかみず)」とも呼ばれ、
これを汲むときは心身を浄めなければならないとされています。
(ちなみに「閼伽(あか)」は、
英語[AQUA(アクア・水)]の語源ではないかとも言われています)
峠には小さな祠(ほこら)があり、
中には「閼伽坂地蔵(あかさかじぞう)」が祀られています。
梅雨期は特に、ヒルに噛まれないよう
ここでしっかりとお参りをしておきましょう。
峠から先は急坂を下り、前鬼川の上流を目指します。
やがて川底に到達し、左に折れて巨大な石を越えると
エメラルド・グリーンの美しい淵「垢離取場(こりとりば)」に到着。

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(浄めの聖地「垢離取場」)

「垢離(こり)」とは「身についた罪・穢(けが)れ」のことで、
今でも修験道の行者さんたちは、
この淵に首まで浸かって心身の浄化を祈ります。
膝まで水に浸かって淵を渡るか
足場の不安定な岩場を飛ぶかして対岸に渡り、
岩に打ち付けられた鉄の足場を登って右に折れ
山腹を登ったあと急な岩場を降りると
28番目「靡(なびき)」である「三重(みかさね)の滝」
昔は鎖一本でしたが今は階段が取り付けられており、
真ん中の滝である優雅な「千手の滝」(落差50m)の直下に
簡単に降りることができます。

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(岩盤を優雅に流れる「千手の滝」)

そこから恐々と下をのぞくと
清冽な「不動(ふどう)の滝」(落差60m)の落ち口が見えますが、
水量の多いときは岩が滑りやすいので
決して身を乗り出さないようにしてください。
「千手の滝」の向かって右側の崖を登ると、
滝を真横から眺める「滝見台」のテラスが現れ、
そこに幅4mほどの広々とした「胎蔵界窟(たいぞうかいくつ)」
口をあけています。
雨露が凌げ、かつ風通しの良いこの窟(いわや)は
役行者が作ったものと言われており、
数多くの修行者たちがここに籠(こも)って
滝行や座禅行を重ねてきました。
今は窟の中央に
役行者と前鬼・後鬼の像が祀られています。

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(雨露を防ぐ十分な広さがある「胎蔵界窟」)

この「胎蔵界窟」の右手には
「金剛界窟(こんごうかいくつ)」という洞窟もあり、
二つ合わせて「両界窟(りょうかいくつ)」と呼ばれていますが、
一般のハイカーはここで引き返しましょう。
この後は「山上ヶ岳(さんじょうがたけ)」とともに、
大峯随一と呼ばれる厳しい岩場が連続します。
まず現れるのが、
切り立った崖を横切る「屏風の横駈(びょうぶのよこがけ)」
続いて落差20mの垂直な岩場を、
鎖や木の根につかまりながらよじ登る「天の二十八宿(しゅく)」
ここには前鬼「不動坊」別当弘化3年(1846年)に寄進した鎖が
今も残されています。
霧で岩が濡れていると大変滑りやすい上、
岩場の最後は鎖が掛けられていないので
一瞬たりとも気の抜けない危険な「行場」を過ぎると、
一番上の滝である「馬頭(ばとう)の滝」(落差45m)に到着。
岸壁に囲まれ「神秘的」な趣をたたえたこの滝は
澄んだ滝壺とのコントラストが美しく、
深山幽谷の静けさに浸ることができます。
「三重の滝」で修行した西行はこう詠みました。
「身に積もる言葉の罪も洗われて 心澄みぬるみかさねの滝」
日常の小さなことを全て水に流し、
身も心も浄められた喜びが
ひしひしと伝わってくるような歌ではありませんか!

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(「千手の滝」の滝下を流れる清流。
この下に落差60m「不動の滝」がある)

「馬頭の滝」の後は谷を渡って対岸の斜面をひと登りし、
「鞍部(あんぶ)」から森の中の急斜面を下ると
前鬼への道に合流。
再び「垢離取場」を経て、「小仲坊」に帰ります。

行程表

前鬼「小仲坊」 (標高約800m)

緩やかな登り: 約30分 登山道: 20分

「閼伽坂峠」 (標高約900m)

急坂を下り、河原で左へ: 約30分      登山道: 50分

「垢離取場」 (標高約700m)

緩やかに登った後、急降下: 約30分     登山道: 30分

「千手の滝」の下 (「不動の滝」のすぐ上 標高約700m)

「千手の滝の」右側を登る: 5分      登山道: 5分

「両界窟」 (左:「胎蔵界窟」 右:「金剛界窟」) ハイカーはここまで!!

「屏風の横駈け」「天の二十八宿」などの崖登り: 約30分

「馬頭の滝」(標高約800m)

対岸に渡り、登ってから急坂を下降。元来た道に合流: 約40分

「垢離取場」 (標高約700m)

行程

「前鬼」「小仲坊」から「千手の滝」まで 
ハイカーコース 片道約2km

所要時間 「前鬼」「小仲坊」から「千手の滝」まで 
行き約1時間30分 + 帰り約1時間40分 (休憩は含みません)

「馬頭の滝」まで行くなら、30分余計にかかります。(必ず経験者同行で入山してください)
※現在、2011年の台風15号の影響で「垢離取場」の砂地が流されてしまいました。 対岸に渡るためには膝まで水に浸かって淵を渡るか、 下流にある余り足場の良くない岩を渡るしかありません。

ヒル対策あれこれ

登山者を悩ませてきた山ビル。梅雨期は特に要注意です。

これまでは

  • 粉石けんを水で溶き、長靴に塗りつける(滑ってヒルが上がれない)
  • 酢や酢酸(さくさん)を靴に塗りつける(ヒルがこの匂いを嫌がる)

などの方策がとられてきました。

しかし最近「ヒルノック」「ヤマビルファイター」などのヒル忌避剤が販売されるようになりました。
ホームセンターではまだ余り見かけませんが、通販などでは入手できるようです。
ご参考までに・・・。

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